皆様、こんにちわ。富士市の「中里ミル動物病院」院長の渡邉です。
今回のコラムは、「避妊・去勢手術」に関するコラムを書いてみました。
ワンちゃんやネコちゃんと暮らしていくと多くの方が考えるのが、
「避妊・去勢手術」
でも、意外とよくわからない事が多いかと思います。
日頃診察室で相談される事を項目ごとにまとめてみました。
Q1.避妊・去勢手術ってどんな手術なの?
避妊手術は子宮と卵巣を取り除く手術で開腹下にて行います。
術創はへそ下数センチ程度で皮膚の下で吸収される糸を埋没させる方法で縫合しますので、退院後は包帯やカラー着用は必要なく通常の生活を送ることが出来ます。通常1日の入院で翌日退院できます。
去勢手術は陰嚢から精巣を取り出す手術で基本的には開腹の必要が無く、術創は陰嚢中央部に1センチ程度で済みます。日帰り手術で手術当日に退院できます。術後は10日ほどで抜糸が必要(猫は必要ありません)となりますが、退院翌日から通常の生活を送ることが出来ます。
まれに潜在精巣(陰嚢まで精巣が降りてない状態)の事があり、開腹が必要となる場合があります。
Q2.避妊・去勢手術のメリットは?
不必要な交配妊娠を防ぐことはもちろんですが、雌では高齢期になると発生する子宮卵巣関連疾患の予防が出来ます。
特に犬では子宮蓄膿症(子宮に膿が貯まる病気)の発生が多くみられ、発見が遅れると死亡するリスクのある病気で当院でも毎月多くの症例をみています。
そのほか、早期の避妊手術を行うことで乳腺腫瘍の発生率を抑えることが出来ると言われています。また、行動学的にも発情期の煩わしさ(犬の発情出血による心身的ストレス、猫の発情期に伴う鳴き声など)の解消にも役立ちます。
雄では精巣や性ホルモン関連疾患の予防が出来ます。特に精巣腫瘍は癌化することが多く、命に係わることもあります。また、性ホルモンが原因で起こる前立腺肥大や肛門周囲腫、会陰ヘルニアなどの発生率を抑えることも期待できます。行動学的には攻撃性やマウンティング、猫のスプレー行為などの軽減が期待できます。
Q3.デメリットは?
雄雌共通で術後ホルモンバランスの変化により基礎代謝量が低下し太りやすくなる傾向にあります。
しかしながら、避妊去勢後用の低カロリーフードを用いたり、食事量を管理することで体重コントロールが可能です。雌ではまれに術後尿失禁や頻尿が起こる子がおりますが、ほとんどの場合は一過性で徐々に回復していきます。
Q4.いつ頃行えばよいの?
様々な考え方がありますが、当院では性成熟を迎える生後8ヶ月以降を推奨しています。
ただし、成長の度合いは個体差がありますのでその子の成長に合わせて手術の時期を判断しておりますので詳しくは当院獣医師に相談ください。
Q5.高齢でも手術は必要ですか?
犬や猫は高齢になっても発情期があり、妊娠が可能です。しかし、高齢の妊娠は母子ともに難産流産のリスクがありますので、誤交配や前述した病気の予防のため必要と考えます。ただし、高齢での手術は麻酔のリスクや体調などを総合的に判断する必要がありますので担当獣医師とよく相談してください。
以上、よくある質問をあげてみました。
避妊・去勢手術ともに一般的に多く行われている手術ではありますが、全身麻酔をかける手術ですので最善の注意が必要です。
その子の状態に合わせた手術計画が必要ですので検討される場合は必ず診察を受けるようにしましょう。
また、当院では術中術後の感染予防のため事前の混合ワクチン接種が必須ですのでその点についても担当医にご相談ください。
中里ミル動物病院 獣医師 渡邉
以上、今月のコラムでした。ご不明な点、ご相談は当院までご連絡ください。